救急車が町中を飛ばしながら走っているのはよく見ると思います。
しかし、その救急車がたまにゆっくり走っていることがあります。
この記事では
サイレンを鳴らした救急車がなぜ遅いのか?
遅い救急車は追い越していいのか?
そんな疑問にお答えします。

緊急走行時の最高速度は?
一般道は80km/hで高速道路は100km/hとなっています。
しかし、これはあくまでも見通しが良く、交通量の少ない場合はこれくらいの速度を出すことはありますが、一般道で80km/hで走ることはありません。
あくまでも、安全運転第一です。
救急車が速度を落として走っているとき
救急車が遅いとき、救急車内ではどんなことが起きているのでしょうか?
現役救命士が解説します。
緊急性の低い傷病者を搬送している場合
救命士は傷病者の緊急度や重症度を判断し、適切な病院まで搬送します。
緊急度がそこまで高くない傷病者の場合、急ぐ必要性がありません。
このため、安全運転を主眼として、ゆっくり運転する場合があります。
機関員(救急車の運転をする人)は、病院まで安全に搬送することが第一です。
事故を起こさないことを第一に考えて搬送します。

揺らすことで、病態が悪化する場合
救急車は皆さんが思っているより、数段揺れます。
初めて救急車に乗った人は「こんなに救急車って揺れるんやねー」と言うこともしばしば・・・
では、振動や揺れで病態が悪化する疾患は何があるのでしょう?
- くも膜下出血
- 脳出血
- 大動脈解離
これらが挙げられます。
くも膜下出血などでは、再出血を防ぐことが救急隊に求められます。
その命を握っているのは、機関員と言っても過言ではありません。
少しの段差でも気を使って走行します。
私はこれらの疾患が疑われる傷病者の場合、Hurry, but gentlyの判断を行います。
日本語で緊急安静搬送‼
緊急だけど安静に・・・
一見矛盾していますが、安静に搬送することが傷病者にとって有益なのです。
現場ではこのような判断の上、救急車の機関員に指示を行っています。
町中で遅い救急車が走っていたら、重症の方を乗せているかもしれません。
揺らすことで、傷病者に苦痛を与える場合
少しの振動でも痛がり、苦痛を伴う傷病者がいます。
それらは、このような方々です。
- 骨折している
- 腹痛・腰痛がある
- めまいがある
- 嘔気・嘔吐がある
骨折の場合、少しの振動で痛みが走ります。
また腹痛を訴えている方は、少しの振動で痛みがお腹に響きます。
めまいがある場合、救急車がふわふわするだけで嘔気が伴います。
このような方々の、負担を少しでも減らすため、救急車の機関員は気を使って運転しています。
AEDの解析や静脈路確保(注射)を行っている場合
心肺停止の傷病者を搬送している場合、AEDの解析のため救急車を停めることがあります。
なぜなら、揺れている車内では、正しい心電図の解析ができないからです。
また、点滴を取る際も、停車して行います。
揺れている車内では注射は難しいですからね。
もし、救急車がいきなり減速して停車したら、こんなことが行われているのかもしれませんよ。

遅い救急車は追い越していいの?
道路交通法で一般車両は緊急自動車の妨げにならないように進路を譲らなければなりません。
このことから、遅い救急車は追い越してもよいことになります。
しかし、その追い越しが緊急自動車の妨げになる場合は、道路交通法違反となりますので注意してください。
基本的には、救急車が後方から迫ってきたら、譲っていただけるとありがたいです。
その時も、縁石などには注意してくださいね。
よく縁石にぶつかるまで寄せてくれる方がいらっしゃいます。
まとめ
【救急車が速度を落として走っているとき】
- 緊急性の低い傷病者を搬送している場合
- 揺らすことで、病態が悪化する場合
- 揺らすことで、傷病者に苦痛を与える場合
- AEDの解析や静脈路確保(注射)を行っている場合
こんな場合があります。
また、遅い救急車は追い越しは出来るけど、妨害には注意
これからも、一般の人が疑問に思っていることのお役に立てる記事を書いていきますね。
最後までありがとうございました。

